2017年 09月 06日
翼果 有川知津子
5月。
にぎやかな気配に近づくと
翼果であった。
翼果は翅果ともいう。
ものの本によると、
この翼にあたる部分は、「果皮または果皮の一部が発達して翼となったもの」。
ご覧のとおり通常は対(ペア)。
ところが、少し離れたところに、三つの翼のあるものを見つけた。
心余ったな。
――その日以来、なんとなくその翼果が気になって、ときどき様子を見にいくようになった。
もちろん、むやみに話しかけたりはしない。
9月。
残暑というには、あまりに過酷な暑さをくぐった翼果たち。
すっかり、薄紅の装いを脱いで、秋の旅立ちに備えている。
* * *
夏行けり長崎駅でおとうとに缶コーヒーを買つてもらつて
三つの翼の子、どこまで飛んでいってくれるのかな。E.