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思いの生まれる場所     藤野早苗

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6月の夕光の中、それは静謐に、けれどたしかな意思をもってたたずんでいた。




この世には実在しないはずのフォルムのそれは、奇異でありながら、懐かしい。




遠つ祖から連綿と伝えられた民族の記憶の具現のように、不可思議な説得力をもって、それは私の眼前に現れた。




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ここは「共星の里美術館」(朝倉市黒川1546-1)。廃校舎を利用した山里の美術館。アートディレクター柳和暢(やなぎ・かずのぶ)氏の審美眼を経た作品はどれも圧倒的な個性を放っている。




中でも、この作品にこころ惹かれたのは、ここ黒川が英彦山系の山岳信仰の地であることと無関係ではないだろう。宗教という体系的な学問ではなく、ただただ自然を畏怖し、祈るという素朴で内発的な行為が信仰だ。



大地から立ち上る「気」が、火焔を上げながら円という空(くう)となり、それを深く覗きこみながら、大切にかき抱く大いなる存在。

それは、神であり、同時に人である。

人間の中に揺るぎない神性を見出すこと、それがおそらく信仰のはじめなのだ。




この作品は「思いの生まれる場所」。作者は八尋晋(やひろ・しん)氏。筑紫野市在住の40代半ばの気鋭の造型作家である。その夜の螢見の会で隣り合わせた人が、八尋氏であった。この偶然はおそらく必然だったのだ。




思いの生まれる場所・・・。

真っ暗な黒川の夜を明滅する螢。それは刹那生まれては消えてゆく思いの形象であったのかもしれない。


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                画像、お借りしています。蛍の明滅は普通のカメラでは撮影できません。




あくがるる魂かぎりなし黒川の水無月闇をひかるほうたる


いつさんに阿といひ吽と押し黙る結合振動子たるほうたる


非線形微分方程式に解く螢明滅その不可思議を




〈共星の里美術館〉パーマネントコレクションより


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廃校舎を利用した趣のある美術館。ぜひご来訪を。

関係者ご一同、温かく迎えて下さいます。


Commented by minaminouozafk at 2017-06-13 22:34
朝倉市の〈世界子供美術館〉の紹介ありがとうございます。
ちょっと怖いけど眼が離せない作品「思いの生まれる場所」、
いつか機会があったら見に行きたいです。 A
Commented by minaminouozafk at 2017-06-13 22:48
最近テレビで紹介されてたように思います。美術館なら息子に頼んだら連れていってくれるかも。まわりの景色に馴染んでいるのでしょうね。Y.
Commented by minaminouozafk at 2017-06-13 23:40
御縁でしたね。ほたるの明滅の不可思議に結ばれた御縁ですね。校舎の様子から、携わるみなさんの温かさが伝わります。
ご紹介ありがとうございます。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2017-06-14 01:07
共星の里、いいですよ。異界感に満ちています。往路、ナビに従って行ったら、とんでもない旧道を提示され、絶対離合不可能な杉林の中の小道を泣きそうになりながら運転しました。色々ありまたが、いい思い出です。S.
Commented by minaminouozafk at 2017-06-14 05:18
作品だけでなく、木の廊下や天井、照明など校舎の佇まい、そして、辿り着けるか~!?と言う道筋も興味深いですね。E.
Commented by minaminouozafk at 2017-06-14 05:43
廃校の美術館行ってみたいです。近くで蛍も見られるのですね。ナビでとんでもない道に導かれ泣きそうになったこと思い出しました。バックは出来ないし進むしかないですよね。N.
Commented by minaminouozafk at 2017-06-14 19:39
まずタイトルに惹きつけられました。古い校舎に飾られた作品の発する気のようなもの、怖くて魅力的です。八尋さんの作品、エネルギー感じます。コメント遅くなってごめんなさい。Cs
by minaminouozafk | 2017-06-13 08:34 | Comments(7)