2017年 02月 27日
風待ちの湊 百留ななみ
陽差しはすっかり春。終日のたりのたりの春の海に行きたくなる。小さな島々が点在する瀬戸内海。蜜柑やレモンの明るい色、爽やかな香りの、まだちょっと寒い瀬戸内海が大好きだ。
一昨日の土曜日、天気予報は晴れ。久しぶりに、とびしま海道にでかけた。本州四国連絡道路のひとつの、しまなみ海道ほどメジャーではない。
とびしま海道は広島県呉市の安芸灘に浮かぶ7つの島巡り。しっぽの岡村島は愛媛県今治市で行き止まり。たしか3度目。いつも、春の海。
安芸灘大橋(平成7年、有料)を渡ると下蒲刈島。次が上蒲刈島。いつも、この島に渡って藻塩麺をいただく。タコ蒲鉾やワカメなどが入った饂飩と素麺の間の感じであっさりしている。食後の蜜柑はご自由になので一ついただく、あまい。
車窓には、彩度、明度の様々な柑橘類がつづく。収穫の真っ最中でコンテナいっぱいの蜜柑が年季の入ったモノレールのようなもので斜面を降りてくる。豊島大橋(平成20年)を渡ると豊島。続いて豊浜大橋(平成4年)を渡ると大崎下島。さいごに平羅橋・中の瀬戸大橋・岡村大橋でゴール。鏡のような凪の海に映る蜜柑のオレンジ。ゆるゆると引き返し大崎下島御手洗へ。
大崎下島は大長みかんで有名。隣の地区の御手洗は、中世の地乗り航路(安全のためより沿岸部を航行)から、江戸中期に沖乗り航路(櫓漕ぎから木綿帆を用いることで帆走の向上)に変わり、北前船や参勤交代の大名も立ち寄る風待ち、潮待ちの湊となりおおいに賑わったようだ。
今でも当時の歴史的な町並みや貴重な文化的な史跡も数多く残っており、平成6年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」となる。シーボルト、伊能忠敬、吉田松陰なども立ち寄っている。平成20年の豊島大橋開通により、気軽に車で来ることができるようになったせいか、5,6年前に来たときがいちばん観光客も多く賑わっていた気がする。
こんなに良い天気の土曜日なのにまばらな人だった。時間が止まったような午後の路地。家並みは白壁、木格子もあり、レトロな建物の病院、茶屋跡の若胡屋もそのままだ。おいらん公園も御手洗の歴史の証。乙女座(昭和12年)劇場も外観はそのまま。150年も続いている現存最古の松浦時計店も。宇津神社、住吉神社、天満神社、満舟寺、大東寺など神社仏閣も多い。
海岸には大波止、高燈籠、雁木など港町のすがたもそのままだ。江戸中期から、昭和初期までの300年近く、瀬戸内海の海運の中継港、潮待ち風待ちの港の御手洗。ちょっと冷たい海風が心地よく、千砂子波止でポンカンを剥きつつひと休み。リピートしたい大好きな場所だ。
遠景には島をつなぐ しまなみ海道の橋が見える
たしか、5年前は映画『ももへの手紙』の汐島のモデルということもあり賑わっていたのかもしれない。観光客は少なくなったが、家々の前には花が、そして花だけではなく、短冊に書かれた一句が飾ってある家もあった。みかんのコンテナの手作り押し車で行き来するお婆ちゃんたち。ほっこり静かな時間に癒やされる。
昨日は第8回呉とびしまマラソン。5つの島を駆け抜ける大会です。土曜日はたくさんの方が準備されていました。きっと春の海を眺めつつ気持ちよくフルマラソン走破されたと思います。
島のあちこちにある無人販売所で1袋100円の八朔、デコポン、ぽんかん、レモンなど沢山買って帰りました。リビングが良い香り。本当にみずみずしくておいしいです。
手入れなき蜜柑畑につどひたるヒヨドリの声のたりのたりや
ななみ
とびしま海道のことは知りませんでした、何年か前にしまなみ海道を通って四国に行ったことはあるのですが。
汐風をうけてのドライブ、気持ちよかったでしょうね。藻塩麺、美味しそう。レモンや柑橘類の香に満ちたリビングがうらやましいです。 A