2016年 10月 03日
片足の斑猫 百留ななみ
雨の多い9月だった。そういえば、まだこの秋は斑猫に出会っていない。赤、青、緑のきらめく宝玉の小さな甲虫だ。たしか去年は・・・の裏路地はすっかりきれいに草取りを終えたばかり。〈みちおしえ〉と言われ、人の歩く先をひょいひょいと飛ぶ。ぜひ写真にと思うのだが、仕草が猫に似ているからの名前の由来もあるようで、かなり俊敏な動きをする。
今年は会えないだろう。ありえない暑さとそのあとの長雨。小さな祠のそば、私を導いてくれる一匹、着地したのは色つややかにきらめく斑猫。スマホを構え、ゆっくりズームして近づく。なんとか撮り終えるまで待っていてくれた。
帰って、さっそく写真を見てみると、なんとこの斑猫、左足がない。どおりで私のカメラにおさまってくれたのだ。このごろ弱者への凄惨な事件が続く。だいたい弱者という言葉も上から目線で不謹慎だと思う。何を基準の強弱なのか。曇り空へ飛び立っていった片足のハンミョウ、大丈夫だろうか。きっとだいじょうぶ。金子みすゞの みんな違ってみんな良い の優しさ、ふところの広さは・・・。

泉鏡花の『龍潭譚』は幻想的な初期の短編だ。赤く咲き乱れる一面の躑躅のなかで少年千里は、斑猫に刺され姉に気づかれないほど頬が腫れ上がり、神隠しにあう。そして異界に踏み込みつつも現実世界にもどってくる。斑猫には毒はないがその美しさからか超人的な力を感じる虫だ。
なぜか、斑猫のきらきらのみどりや赤は、とおい夏の祭りのメロンソーダ、リンゴ飴を思い出す。斑猫は英語では tiger beetle 虎のような甲虫だ。やはり、動作は猫科に似ているらしい。
片足のハンミョウ跳べり曇天の小さき祠を幽かに照らし
百留ななみ
ななみさん、ちょっとかなしいけど、素敵な写真をありがとう。ハンミョウとは数年前雲仙で出会ったきり、短歌作品の中でしか会えていませんでした。美しさもさることながら「みちおしえ」のさまが印象的ですよね。
大会の様子は、皆さんのブログでおいおい報告されると思います。お楽しみに~。
斑猫、きれい。片脚だったなんて…。でも虫にも知恵があって、ハンデを超える何かをしだいに身につけます。見習わなければ。S.

