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『インパラの群れ』高橋元子歌集 藤野早苗

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高橋元子さんは、朔日短歌会所属。入会は2009年というから驚く。

・走高跳の子の反らしたる背の中にカンナの花のあかあかと見ゆ
・にはとりも備品であれば監査前に何度もなんども数をかぞへる
・春先の風の梳きゆくいちやうの木シンメトリーに梢ののびる
・インパラの群れのやうなる生徒らの朝の階段をかけのばりゆく
・世界中にたつたひとつの番号とIPアドレス=わたし
・肩書をさらりはづせは生えてくる翼の色はなにいろだらう
・ようきんしやつたと迎へくれたる人のゐて忘れんとばい博多の夜を
・とんぼの目玉くるりとまはす指先の空にふるるに季節のめぐる
・見えにくき世の中見ようとするために母の眼鏡をこのごろ借りる

集中より。

高橋さんは、地方公務員として公立高校に勤務し、短歌を始めたのは、定年後のこと。再任用の期間が4年あり、その間は仕事をしながらの作歌であったという。


作歌に関わった時期の関係で、本歌集には、第一歌集の花というべき相聞がない。しかし、それもむしろ魅力となっている。職場詠を中心にした作品群はどれも、現代的な軽やかな韻律で、知的に詠まれながら、人生経験の豊かさを感じさせる余裕に満ちている。

歌集名は、掲載歌4首目から。躍動感に満ちた高校生の姿を、アフリカの草原を駆けるインパラと重ね合わせた作品から採ったとのこと。人は環境に作られる。作品から想像される高橋さんは、機動力に溢れ、キュートなインパラそのものだ。作品の若々しさは長く高校生に心を寄せて奉職されてきた証でもある。

本歌集は、第3回現代短歌社受賞。
これから短歌を始めてみようかなと思っている方にも読んでいただきたい。さわやかな読後感の一冊である。


放たれし矢となり走れサバンナの食物連鎖の涯へインパラ
藤野早苗

Commented by minaminouozafk at 2016-09-20 09:48
クリクリ様
アホのような質問ですみません。拙歌最後のいんぱら、ほんとはカタカタにしたいのですが、何度編集してもひらがなで出てきます。なぜ? S.
Commented by クリクリ at 2016-09-20 13:21 x
編集画面でひらがなの部分をカタカナに変えて保存するだけのはずなんですが。。
そのやり方で、とりあえずインパラに修正しておきました!
Commented by minaminouozafk at 2016-09-20 14:09
ありがとうございます。その操作をしたのですが、やはり、私の手からは変なモノが出ているのでしょうか。S.
Commented by minaminouozafk at 2016-09-20 17:13
「インパら」出勤前に読んで気になってました。良かった~。ある意味、早苗さんってマジックハンド?(@_@)
高橋さんの歌集、端正な詠み方のなかにおおらかなお人柄が伝わって来ます。コスモス以外の方の歌集紹介これからもよろしく!E.
Commented by minaminouozafk at 2016-09-20 20:37
了解です。S.
Commented by minaminouozafk at 2016-09-20 21:27
群れをつくる動物はほかにもあるのに、インパラ! その響きと響きからくるイメージに引き付けられます。ご紹介ありがとう。C.
by minaminouozafk | 2016-09-20 09:36 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(6)