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桑の実 有川知津子


 昨日、桑の実の写真がとどいた。色づきはじめて間もない実群で、蟻も紛れるほどの黒紫に熟すまでにはもう少しかかりそうだという。

 その下に立って写真を撮るひとの姿に、柏崎さんの歌が思い出された。


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  夕日差して昨日(きのふ)のごとしあしひきの山桑の実の熟れたる木下 柏崎驍二


柏崎さんの歌の桑の実は熟している。この初二句には熟れた桑の実がふさわしい。熟れた桑の実にふさわしい初二句ともいえる。この歌は、私にはセピア色の印象で思い出される。引用するのに、ひさしぶりに『百たびの雪』をひらくと、いつかの私が鉛筆でしるしをつけていた


 話をもどそう。

 桑の木まで歩いたひとは、熟すまで樹下美人図をしていられないというので、写真をとって帰ってきたそうだ。


桑の実のたよりがとどくふるさとの家にいちばん近い桑の木



# by minaminouozafk | 2025-05-14 06:30 | Comments(0)

この間の日曜日は母の日でした。わが家は世間の行事や記念日にあまり興味がない人間の集まりなので、私も全く期待していませんでした。しかし、今年はたまたま、娘が母の日あたりに小旅行でハウステンボスに来ることになり(GWの人混みを避けて薔薇を楽しみたかったらしい)、じゃ帰りの空港までの途上で博多駅近辺でお茶でもしようか、となりました。


5月10日夕方、博多駅中央改札で真っ赤なロリータドレスに鍔広帽を被り、満面の笑みで手を振る娘。もうその無敵のメンタルに爆笑です。そのまま博多駅アミュプラザ9階くうてんの椒房庵で食事。そこで母の日の贈り物として、ハウステンボス土産のフレイバリーティーをもらいました。可愛い。去年社会人になって、まだまだ大変なこともあるとは思うけど、こうして時々旅行もして、毎日の暮らしを楽しんでいる娘。そんな姿を見ることができたのが、何よりの母の日のプレゼントだったのではないかと思います。娘、ありがとう。



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椒房庵〈博多めん鯛まぶし〉

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ハウステンボス土産
フレイバリーティー

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チューリップピーチ
水色はピンク

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そして、帰宅後。ふと今年は初めての母のいない母の日だったことに気づきました。


娘から母の日を寿いでもらい、それはとてもとても嬉しかったのですが、そうなると、私も彼岸の母に何かしたくなったのでした。

 

冷蔵庫の野菜室に、実家から持ち帰った豆類がありました。母は豆を甘く炊くのが好きだったので、小豆餡を作ろうと思い、昨晩から水に浸して、今日二度茹でこぼした後、じっくり煮上げました。白玉も作ってこれも実家から持ち帰っていた黄粉をかけていただきました。



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去年の今頃、実家からここ福岡のメディカルホームに転居して、新しい環境にも馴染んで体調も整った母と母の日を祝いました。その時は本当に元気で、一緒に過ごせる時間は無限にあるような気がしていました。いろんなことを後回しにして、母には申し訳ないことをしたと思います。


母のレシピで炊いたこの小豆餡をいただきながら、母を思う……。この世に母と呼べる人はいなくなってしまったけど、やはり私は母の娘なんだと思えた今年の母の日。


母として、娘として、一日で二度美味しい、そんな2025年5月10日、母の日でした。




   茹でこぼすこの一手間が愛ならん雑味ゑぐ味を手放す小豆


# by minaminouozafk | 2025-05-13 12:05 | Comments(0)

 

 爽やかな5月の夕昏。


ひさしぶりにデッキで食事をと思い立った。以前はちょくちょく庭でバーベキューをしていた。隣近所もお互い様って感じだった……と思う。ふたりの生活になってからはホットプレートまで。それでも稀有な感じ。



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暮れなずむ空をながめつつワインがすすむ。そういえばヘリコプターのプロペラ音だろうか。大きくなったり小さくなったりをずっと繰り返している。ようやく居なくなったと思うとふたたび大きくなる。だんだん落ち着かなくなってくる。たぶん近くを旋回しているのだろう。



小一時間ほど経ったのち、西の空にヘリコプターは消えていった。何かが起きたのだろうか。スマホを開いてみると近くの小学校の敷地内で車の事故があったと速報がある。



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小学校の敷地内で下校時の男子が肋骨を折る重傷らしい。運転手は40代女性で近くの人のようだ。学校職員か保護者かもしれないが明記されていない。たいへんな事故だが詳細が解ってほっとした。


たしかに校区内のわれわれにとっては大きなニュースだと思う。しかし関門海峡をこえてヘリコプターを飛ばすほどだろうかと思ってしまう。翌日ネットのニュースに空からの映像を見つけた。



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たしか先月、壱岐の島からの医療用ヘリコプターの墜落死亡事故があった。近くの関門医療センターにもヘリポートがあり、時々発着している。


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沖縄のうつくしい海岸で何度も戦闘機の音を耳にした。ウクライナやガザではその戦闘機が空爆をしている。



鳥や虫たちにだけ赦された大空への飛翔。人の空への思いがかなったのは百年ちょっとまえ。本当に必要なことは必要。でも熊蜂のほうがヘリコプターよりもずっとホバリングは上手いのだろう。




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熊蜂もヘリコプターもむくつけし空をゆるがすホバリング音





# by minaminouozafk | 2025-05-12 09:52 | Comments(0)

ブログ記念日104回

今年の五月は天候が荒れ気味で、気温変化が激しかったり、台風のような風が吹くと思えば大雨が降ったりと、落ち着かない日が続きました。それでも植物は季節を間違えず例年とかわらず木々は新緑に包まれ、わが庭では少々迷惑なツルニチニチソウの花が満開で、植物の生命力に圧倒されそうです。今は外出をしにくい私ですが、宗像大社の斎庭の楠若葉を見に行きたいこの頃です。

毎月恒例のブログ記念日ですが今回は104回目、長く続けられたことを南の魚座メンバーとお読み下さる方々に感謝しています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。


2022年5月



独裁者  大西晶子

映画では滑稽な人で済むけれど独裁者らの力を怖る

一国を統べたるのちは全世界制覇ねらふや独裁者らは

LPガスのボンベ尊し六十年以上すがたを変へずはたらく

植物の生存戦略たくみにて自ら肥料をつくる豆類

キッチンの窓にあらはれ四十年こよひの守宮は何代目だらう


レモンパトロール 百留ななみ

飛行機が離陸直後の滑走路 さへづり残し揚げひばり消ゆ

あさみどりいろの青虫さみどりの甘藍ひたすらさりさり食べる

うりずんのフクギさみどりシーサーの角を曲がればわたつみが照る

みそ汁にごはんに鯵の一夜干し糠漬けきうり定番朝餉

まだ黒きアゲハ幼虫三匹をつぶす五月のレモンパトロール


やはらかき針  藤野早苗

みんなみに霾る朝きつぱりとわたしはわたしを生きねばならぬ

やはらかき針とおもへど過ちて触れし指にくれなゐの生る

うつしよの荷を少しづつ少しづつ降ろし身軽な旅びととなる

おほいなる指あらはれいちにんを「竜の匂い」の空へ引き抜く

ゆふぐれのソファにひとり丸まりぬジグソーパズルの欠片のやうに


あづかりもの 有川知津子

また一人ひとを逝かせて晩春の海のひかりのなかへ出でたり

花かずの多い二株売れてをり行きに見てゐたる紫紺ムスカリ

父の見し夢のひとつに新しいパジャマを買つてわが来たるゆめ

日が差せば錫のひかりの海がみゆ木の間このまに膨らみながら

人の子といふにかぎらず形あるあづかりものは春ほど怖い


そよ風の月  鈴木千登世

樹下には緑の風が行き交へり座る人待つベンチを撫でて

桐の花挿すかたはらに物を書くひとりの浄き影の思ほゆ

わたくしと娘の声の似たること 海中(わたなか)に潮の道のびてゆく

つぶやきは風に紛れて海に出で声なき砂に吸はれゆきたり

夏柑の花甘やかに匂ひ立ち萩の五月はそよ風の月


ゆふどきの雨  大野英子

はぐれ雲がほうと見てゐる入港の船を嘉するごとき彩雲

さくら散りたがはず春はやつてきた六月はもう猛暑の予報

ゆふどきの雨、をんならは傘さしてをとこらは閉じてゐるほどの雨

くきやかなみどり増えゆく春山のけぶるがごときひとつ笹むら

野ぶだうの茎すんすんと伸びるからみまもりませうそのゆき先を


魔女になれたら  栗山由利

すこしずつ朝の空気がうごきだすパン焼くかをりとラジオ体操

古鍋のマーマレードをまぜながら魔女になれたらいれやう秘薬

枝先の新芽がをしへてくれた春 みみをすませば足音がする

あれこれとたがひの穴をうめながら老々介護は二人三脚

やはらかな五月の風に水滴のなかのちひさな青空ゆれる


# by minaminouozafk | 2025-05-11 07:00 | Comments(0)

あめあがり  栗山由利

 雨上がりの朝、こんもり茂ったオタフクナンテンも、すんすんと伸びているスカシユリや晩白柚も一段と輝きを増していた。


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 そして、もっともっと近づくと晩白柚の若い枝先に拡がる別世界があった。


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 水滴に閉じ込められた広い世界。水滴とともに消える儚い世界。

 私の一生も水滴のようなものでよいと思う。



     やはらかな五月の風に水滴のなかのちひさな青空ゆれる


# by minaminouozafk | 2025-05-10 11:58 | Comments(0)