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ルドルフ2世とアルチンボルド  有川知津子

神聖ローマ帝国歴代皇帝のなかで、異彩を放っているのがこの方。


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ルドルフ2世(1552年-1612年)である。


ご覧いただいているのは、今、福岡市博物館で開催中の

「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」のチラシ。なんとも賑やか。


題してウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世像》。1591年制作。


ウェルトゥムヌスは、ローマ神話に登場する果実の神、季節のめぐりを司る神でもある。


このチラシを見たとき、なんと珍妙な絵! と思うと同時に、

嬉々として絵筆をふるう画家の姿が思われて、じわんと胸があたたかくなってしまった。

これはもう描くのが楽しくてしょうがないという感じ。


画家の名は、ジュゼッペ・アルチンボルド(1526年-1593年)。

マニエリスムを代表する画家の一人として数えられる。


もちろんチラシより、実物のほうがいいに決まっている。見に行った。


ルドルフ2世とアルチンボルド  有川知津子_f0371014_20550425.jpg


このルドルフ2世像、

なんと、のべ67種類もの果物や花や野菜で形作られているという。

皇帝を豊穣神になぞらえることによって、その治世の繁栄が祝福されているのだそうだ


肖像画の隣には、絵解きされたパネルが掛けられて、

これはサヤエンドウかやっぱり、

なんとこれはサクランボであったか、

などと答え合わせができるようになっている。

みんなあっちを見てこっちを見ては頷いている。

中に一つ「不明」と書かれたのがあったのも面白かった。


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しかしこの絵、通常の概念の〈威厳〉といったものからはほど遠い。

それでいて、眼差しは穏やかで慈しみに溢れている。


アルチンボルドはこの皇帝を心底慕っていたのだろうと思う。

栄華の寓意があるとはいえ、形ばかりの敬礼ではこうは描けないような気がするのである。

そしておそらく皇帝もそのアルチンをよく理解していたのだろう。

絵を贈られてたいそうな喜びようだったというのだから。


――かれこれ400年余り前の話である。


  騙し絵にだまされてゐる秋の昼いまならもつとやさしくなれる



Commented by minaminouozafk at 2017-11-22 19:30
終わるまでにはぜひ行きたい、大好きなバロックの驚異の世界!憧れのトロンブ・ルイユ、アナモルフォーシス!海の生き物で描かれたアルチンボルデスクも展示されてるかなぁ。ルドルフ2世に特化してるなら無いかな。紹介ありがとう。E.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-22 19:34
まだ行っていないけど、図録はあります。繰り返し見てます。ちづりんのご紹介で早急に見に行きたくなりました。愛が大事なのですね。S.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-22 21:32
知っている野菜の名前を数えてみました。20くらいまでは言えましたが、その後は、、、難しい。67種類の野菜、果物、花、なんて凄い!アーチンボルト。やはり愛ですね。A
Commented by minaminouozafk at 2017-11-23 04:01
一度目にしたら忘れない絵ですね。67種類もの果物や野菜や花で描かれていたとは。確かめるのにずっと立ち止まっていそうです。楽しい時間でしょうね。「不明」とあるのも面白いですね。愛、いいですね。Cs
Commented by minaminouozafk at 2017-11-23 07:27
アルチンボルド楽しいですね。ルドルフ2世との信頼関係あっての野菜果物。一つずつ見つけて67全部見つけたら良いことありそうですね。N.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-23 08:18
一度は目にしたことがあり、見たら忘れられない絵のひとつですね。詳しいご紹介ありがとうございます。「不明」というのは現存しないということ?視線は優しい。Y.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-23 23:38
会場出口には、その前に立つと自分の野菜顔が出来上がるシステムがありました。写真も撮れます。私の額は大きな林檎のようなトマトのような赤色に~。愛かも。Cz.
by minaminouozafk | 2017-11-22 05:53 | Comments(7)