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坑夫  鈴木千登世

先週に続いて常盤公園のお話を。


公園の遊歩道を正面入り口方面に歩いて行くとオレンジと白の塔が見えてくる。公園のあたりは江戸時代から露天掘りで石炭が採掘されていたところで、宇部炭田の発祥の地。宇部は石炭によって栄えた街。その歴史を後世に伝えるために園内に石炭記念館が建てられている。


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オレンジと白の塔は、炭鉱で人や石炭を地底から地上に上げるために使われていた竪坑櫓を移設してエレベーターをつけて展望台にしたもので、地上37m(海抜67m)の展望室からは公園が一望できるほか宇部空港や海底炭鉱のあった瀬戸内海も見渡せる。晴れた日には九州や四国の山々まで見えるという。



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飛行場の向こうの海の底に海底炭鉱があった


館内には炭鉱関連の資料が収蔵、展示されているほか海底炭鉱のモデル坑道が造られていて坑内の様子を体験できる。炭鉱で働く人の住居も再現されていて、当時の暮らしが垣間見られる。

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石炭記念館へのスロープの傍らに彫刻家荻原碌山の「坑夫」が置かれている。

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力強さと静かな意志。心を捉えて離さないものがある。


教えてくださったのは、山陽小野田市の短歌大会で選者としてご一緒した木下幸吉先生。今年は仕事の都合で参加が適わなかったけれど、温かく実感のこもる先生の歌評はいつまでも聞いていたい。先生ご自身が技術者として炭鉱で働かれていて、展示品の中にも歌が紹介されている。

1階の入り口の本棚には関係書籍と並んで先生の歌集『炭鑛(やま)の日々』も展示されている。



坑底に靄低くこもる朝なり三番明けを腕組みて昇坑(あが)

閂を微動して噴き出す断層水のしぶきに濡れつつ一夜明けたり

ガラス戸に鍵掛けてゐます母の影夜勤のわれは振り向きてゆく

     『炭鑛(やま)の日々』

厳しい作業と現場で働く者の実感が韻律に乗って立ち上がってくる。


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記念館の前に植えられているメタセコイア(石炭の原木)

絶滅した種と思われていたため「生きている化石」と呼ばれることも



炭鑛(やま)の日々』閉ぢてしばらく目を瞑る労働の歌らかな声


Commented by minaminouozafk at 2017-11-16 18:40
宇部は炭鉱の町。そうでした。忘れてました。でも常盤公園の中に記念館があるのは知らなかった。「坑夫」、いいですね。眼差しが凛としています。福岡も炭鉱の名残があちこちにある町。同じ空気を感じました。S.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-16 19:00
良い眺めですね。直方にも「石炭記念館」があり、庭には大きなメタセコイアが筑豊炭田を形成した「石炭の原木」と説明されて植えられていることを最近の作品で知りました。(選歌で勉強させてもらってます・・・)日本の発展を支えた産業です。もっと知らねばならないですね。E.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-16 21:15
山口県は宇部の石炭・小野田の石灰石など、福岡県と産出する資源が似ていますね。。海峡に隔てられていますが地下では繋がっているのでしょうか。宇部の石炭の露天掘り、知りませんでした。A
Commented by minaminouozafk at 2017-11-16 22:30
宇部の炭鉱のご紹介、ありがとうございます。炭鉱のことはいろいろと身近に感じています。引いてくださった『炭鑛(やま)の日々』の歌、繰り返し読みました。荻原碌山の「坑夫」はコスモスが似合いますね。Cz.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-16 23:11
宇部と聞くとセメントがおもいうかびますが、九州と同じ石炭の町だったのですね。碌山の「女」は衝撃でした。Y.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-17 07:19
石炭記念館は小学生のころ家族と訪れました。リアルな炭鉱の再現は衝撃的でとても怖かった思い出です。木下幸吉先生、宇部での県大会でお世話になりました。穏やかな飄々とした方、炭鉱の技術者とは知りませんでした。炭礦の日々の短歌、すごく良いです。ご紹介ありがとうございました。N.
Commented by minaminouozafk at 2017-11-20 02:49
福岡にも筑豊炭田をはじめ多くの炭田がありますね。産業を支えてきた石炭。多くの人の力があってのことだと改めて思いました。「坑夫」は長く見つめていたい作品でした。Cs
by minaminouozafk | 2017-11-16 06:02 | Comments(7)