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合歓、白秋から柊二へ  有川知津子

昨日の早苗さんの記事にあるように、

先日の全国大会の基調講演は高野公彦氏による「コスモスの継承と前進」であった。



1首目に高野さんが引用したのは、言うまでもなく宮柊二。


昼間見し合歓のあかき花のいろをあこがれの如くよる憶ひをり

                          柊二



代表歌であり、コスモスに連なる歌人には重要な作品。

思い入れ深くおもっている方も多いのではないだろうか。



合歓には、「かうか」とルビが付されている。

この歌について、高野さんは、

女性の面影が感じられるということを含めて丁寧な解釈をほどこされたあと、

継承という観点から、「かうか」という特殊な読み方には、

白秋の先例があることを付け加えられた。だが具体的な作品は示されなかった。

(あ、あ、あ、宿題の意図であるな)

そうなるともう気になってしょうがない。



月曜の夜、博多にたどり着いた私は、

部屋の明かりをつける前に、なんとなく小さな棚を眺めた。

白秋関連の本がわずかにあるあたりを、である。

すると、なんと竹取の翁の竹のように光を放つ一冊があるではないか。

(うそっ、うそよ)



それがこれ。


合歓、白秋から柊二へ  有川知津子_f0371014_00261804.jpg


『思ひ出』(明治44年6月)の、これは復刻版である。

しばらく繰ってゆくと、こんな詩があった。 



 いさかひのあと


(あか)いシヤツ着てたたずめる

TONKA JOHN こそかなしけれ。

白鳳仙花(しろつまぐれ)のはなさける

夏の日なかにただひとり。


手にて(さは)ればそのたねは

(さや)をはぢきて飛び去りぬ。

毛蟲に(ピン)をつき刺せば

青い(しる)出て地ににじむ。


源四郎爺は、目のうすき、

(さかな)かついでゆき過ぎぬ、

(かれ)の禿げたる(あたま)より

われを笑へるものぞあれ。


(にく)(まち)かな、風の來て

合歡(カウカ)の木をば吹くときは、

さあれ、かなしく身をそそる。

君にそむきしわがこころ。



「いさかひのあと」という題。喧嘩したのであるか~。



4連に「カウカ」とある。


合歓、白秋から柊二へ  有川知津子_f0371014_00271012.jpg


「君」との思い出が深い街なのだろう。喧嘩をすれば街さえ憎くてたまらない。

合歓の木を風が揺らして吹くだけで、胸が苦しいという。

この詩にも女性の面影があるのだな。



……引用はしてみたけれど、

講演のとき、高野さんが思い浮かべていた作品とは別物のようなのだ。

というわけで、まだ1首目(全32首)の復習も終わっていないのである。


* * *


  江戸風鈴よく響くなり長崎のうぶすなの島の()(あを)の風に



Commented by minaminouozafk at 2017-09-20 22:41
ちづりん、お疲れのところ、きっちり調べていただきありがとうございます。カウカ、このルビあったのですね。研究熱心なちづりんに感服です。S.
Commented by minaminouozafk at 2017-09-20 23:21
ちづりん、合歓を「カウカ」と読ませるのはもしかしたら方言かもしれないと高野さんはおっしゃっていましたね、とすると柳川弁なのでしょうか、新潟弁では無いとも言われていましたが。疑問は帰宅後すぐに調べるちづりん、頼もしい。教えてもらえて感謝してます。A
Commented by minaminouozafk at 2017-09-21 00:34
さすが、ちづりん。探究心が深いなあ。
痛みを抱えていても、最後までテンション保てていたのは帰宅後の楽しみが待っていたからなのね~。
高野さんも喜ばれる事でしょう。真の「カウカ」の作品に出会えますように。E.
Commented by minaminouozafk at 2017-09-21 06:03
探究するのは深い楽しみを生むなあと思いました。白秋の素敵な詩の紹介をありがとうございます。全国大会の余韻が響いてきます。皆様の報告本当に嬉しい。Cs
Commented by minaminouozafk at 2017-09-21 06:43
ありがとうございます。本当に全国大会の余韻きゅんきゅん響いてきます。白秋のいさかひのあと。ロマンチックな気持ちになりました。暗がりの中の一冊からカウカを見つけられた喜び。わくわく伝わってまいりました。N.
Commented by minaminouozafk at 2017-09-21 07:33
ひとつづつ、丁寧に掘り下げてくださるちづりんの近くに居れることは幸運です。歌の読み方、鑑賞の仕方もとても勉強になります。ありがとうございます!Y.
Commented by minaminouozafk at 2017-09-21 22:40
南の魚座の諸先輩をみならって、復習を、と思ったので~す。亀の歩みとうさぎの休憩で、がんばります。Cz.
by minaminouozafk | 2017-09-20 06:43 | Comments(7)