2017年 09月 05日
パラレルな時間の中で 藤野早苗
銀行でいくつか用事を済ませ、郵便局で荷物を送る。ここまで30分。
車で移動して、近所のスーパーに立ち寄る。しばらく買い物に出なくていいようにちょっと多めに購入しておく。猫たちのおやつも忘れずに。夫のつまみのかわきもの、たしか切らしていたような気がする。で、とりあえず、買っておく。
レジにするか、セルフレジにするか…。混んでいないのはセルフレジ。じゃあレジに並ぼう。
2籠分、打ってもらって支払いをすませ、レシートをもらう。きっちりたたんで財布にしまい、レジ袋に購入品を詰めてゆく。ゆっくり、丁寧に。えーっと、ここまで1時間。
駐車場で車に荷物を積み込んで、さあ乗り込もうとすると、足元に小さなカマキリ。さみどりのまだ柔らかい身体で灼熱の地面を歩いている。
「轢かれてしまいますよ。いや、その前に干からびてしまいますよ。」
地面にしゃがみ、なんとかカマキリを掌に載せて、駐車場脇の生垣に移動させる。意外と手間取り、ここまで計1時間10分。
玄関の花が傷んでいたことを思い出し、いつもの花屋へ。持ちのよいキク科にするか、香りのよいユリ科にするか、水切りは面倒だけど大好きな薔薇にするか、楽しく迷って、けっきょく薔薇を買う。気のいい花屋のご主人と秋になったら入荷予定の鉢物の話題で盛り上がり、結構な時間を費やした。いいぞ、いいぞ。ここまで1時間30分。
あとは車で坂道を上り、うちの猫さま方かかりつけのペットクリニックでいつものご飯を購入する。ストレスに弱い脚長マンチカン(言語矛盾)のうづと、野天生れのぽっちゃり(野良上がりのデブとも言う)二コラはそれぞれお気に入りの療養食があり、定期的にこの病院で購入している。看護師さんたちが優しくて、ちょっと心配なことを立ち話で相談させてもらえるのもありがたい。今回はぽっちゃりさんの便秘について相談。ふむふむ、なるほど。お、これで1時間50分。
感謝の言葉を申し述べつつ、ペットクリニックを出て自宅へ向かう。わが家の駐車スペースに車を入れたところで、ちょうど2時間。
多分、もうすぐ。
チーン・・
スマホのメッセージ着信音。
「羽田に着いた」
ただそれだけ。
14:55 福岡発の機に搭乗した娘。
空港で離陸を見届け、帰途に就くわけだが、いつも真っすぐ帰れない。途中、あれこれ用事を済ませ、わざわざ時間がかかるように立ち回る。だいたい2時間。
福岡―羽田間の飛行時間。
娘が東京に辿りつけない間、私も帰宅できずにいる。
パラレルに流れる時間をともに浮遊するように、辿りつけない自分を楽しんでいる。
東京まで2時間。
福岡空港からうちまで、やっぱり2時間。
なんだ、東京はそんなに遠くない…。
そんな詭弁で自分を騙す夏の終わり…。
夏季休暇果てし娘を運ぶ機を容れて余力のある夏の雲
アキレスは亀に追ひつけないといふ詭弁の中を走るアキレス
ご主人にたいしては、「ような気がする。で、とりあえず」笑っちゃいました。
とっても、可愛らしい仔カマキリちゃん、優しい早苗さんに見つけて貰って良かったね。豪華な夕食!お腹空きました~E.
そうだったんですね、更紗ちゃんが東京に着くまではお家に戻らず、浮遊状態で過ごすんですね。母ならではの切ない時間、私にもそんな日がありました。早苗さんに会えて蟷螂君幸せでした。A
「いいぞ、いいぞ。」が好き。Cz.