2017年 03月 29日
美男子自慢 有川知津子
島の本家に親戚が集まった。
海を渡って、ミチオおじ夫婦もやって来た。
ミチオおじ。祖父の弟にあたる。
残念なことに、わたしは祖父を知らない。
この世の際(きわ)のところですれ違ってしまったようなのだ。
ほんとうにザンネン!
これほどまで残念と思うのは、たぶんに祖母の口癖のゆえ。
祖母は、それはもうしょっちゅう、
「じいちゃんが生きていたらどれだけ可愛がったかしれんねえ」
と言っていた。祖母のいない今は、母が言っている。
――ミチオおじ、とちょっと改まって書いてみたけれど、
「ミチおじちゃん」と呼んでいる。
先に着いていた私は、大好きなこのおじを玄関先で迎えることができた。
うれしくてガバリンと抱きつく。手加減なしのガバリンでも、おじは平気である。
偉丈夫だ。海の男だ。ユラッともしない。
(もしかしするとちょっとはしたかも知れない。八十幾つであるし――)
「じいちゃんは美男子だった」。
これも祖母の口癖だった。祖母のいない今は、やっぱり母が言っている。
じいちゃん美男子説はシンジツかもしれない。
ミチおじちゃんは、とびっきりステキな美男子なのだ。
長崎の港。
五島への船はこの桟橋から出て、五島からの船はこの桟橋につく。
母をおき島を離れる船のなか出航までの時長かりき
しっかり詰まった愛が伝わる~。E.