2017年 03月 23日
縄文のビーナス 鈴木千登世
身籠もることは古代の人にとって不可思議な、それに増して幸いの象徴だったのだろう。妊婦をモチーフとした土偶を見つめながら、土偶を作って祈りを捧げた縄文の人たちを思った。
ここは長野県の尖石縄文考古館。八ヶ岳山麓の縄文遺跡から発掘された2000点あまりの考古資料とともに国宝「縄文のビーナス」(棚畑遺跡出土~縄文中期)と国宝「仮面の女神」(中ッ原遺跡出土~縄文後期)と呼ばれる二体の土偶が展示されている。
写真撮影が許されている!(嬉しい)ので、前後左右からビーナスと女神を見つめ、写真に収めた。
墓地から出土した女神は前衛美術を思わせる神秘的な雰囲気。
時代も違い、おそらく祈られ方も違った二つの土偶。作り手はとうに土に帰っていなくなってしまっているけれど、そのあこがれというか畏れというか陶酔というか自負というか…時を超えた作り手の思いが伝わってくる。
春の初めの、青空が広がる穏やかな日。
考古館を出て、復元されている縄文時代の竪穴式住居の中に入ってみた。背後には栗や楢の木のある広葉樹の林があった。想像は縄文の暮らしへふくらんでいく。煮炊きする女たちと歓声を上げて遊んでいる子どもたち。男たちもくつろいでいる。時代は違っても幸いを祈る、人の感性のみなもとは変わらないものだと思う。黄金色の枯れ野を見渡しここで暮らしていただろう縄文の家族やその集落を思った。
今日のような穏やかな青空の日があったことだろう。風となってここにいない人を思う。
けふ一日無事に終えたる安堵もて空仰ぎけむ縄文人も
一首も素敵。一日を終えた安堵感、忘れていたかも。E.
仮面の女神はどっしりと大地を踏みしめて、こちらもまた力強い。こんなにもおおらかな女性像が他の時代にはないのが不思議です。 A
ありがとうございます。Cz.