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COCOON雑感 藤野早苗

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COCOON Issue01 を読んだ。
昨日の有川さんのコンテンツ紹介に乗っかって、私は印象に残った作品を引いてみる。

巻頭作品より
河合育子
・めくりたる書類まばゆしたかぞらの抽斗ひらく葉桜のころ
水上芙季
・遥かなるすいへーりーべーぼくのふね 高校時代の夏の雲思ふ

詩情豊かな河合作品、自在感溢れる水上作品。

・をみな三人家族にをれば月のさはりいつも誰かがなりてさみだれ
久保田智栄子
・わだつみのいろこの宮の樹の子孫そんなかんじの大樹とおもふ
有川知津子
・せんそうせんそう口のなかにはさはさはとアルミニウムの擦れる音す
大松達知
・尾びれある蛙どの子も尾びれなき蛙になりぬ つかのまの初夏
真島陽子
・っぱなし族の長なるこのひとを愛してしまい仕舞う了う日々
大西淳子
・をんなだからなめられたなどと前時代的に思ひぬベガ光る夜
斎藤美衣
・立葵平気で嘘をつきそうな花なりされどそこがよろしき
小島なお
・お陽さまをオレンジ色のマーカーでぐるぐる描けば夏がきました
島本ちひろ
・この世からはみ出しさうになる日暮れ犬とどこまでも小道ゆきたし
岩崎佑太

久保田の家族詠、有川の浮遊感、大松の磐石な個性、真島の端正さ、大西のペーソス、斎藤の職業詠、小島の安定感、島本の不可解さ、岩崎の保守堅持…、それぞれがすでに自身のカラーを有しており、オルタナティヴに影響しあいつつ、個を磨こうとする勢いが感じられた。

本としてのデザインもいい。時評、歌集評、エッセイといった読み物も充実している。そのビジュアル的な見せ方も新しい。同人それぞれのポテンシャルの高さが感じられた。

同人は1965年以降に生まれたメンバーだという。もちろん20代も多い。「若いということはそれだけで才能だから…」
20年前に言われた言葉である。その時には意味がわからなかった。誰にでも平等にある若さが才能のはずはないと思っていた。しかし、若さゆえに与えられたチャンスを活かせるかどうか、本当の才能はここからなのだ。

20年を棒に振った人間は思う。華々しい船出の後の航海の途上こそを大切にしてほしいと。

COCOON創刊、おめでとうございます。


みづからの紡ぎし繭を割る羽化のやすからぬこそいとたふとけれ
藤野早苗




Commented by 大西淳子 at 2016-09-22 13:21 x
早苗さん、早速丁寧に読んでくださり、嬉しいです。
促音から初句をはじめたのは、旧仮名への密かな挑戦です。新仮名の特権というか。今後とも、よろしくお願いいたします。
Commented by 白川ユウコ at 2016-09-22 14:01 x
COCOONご紹介ありがとうございます!私の担当したコーナーの画像を掲載してくださって嬉しいです(*^^*)次回の各記事の執筆者(および〆切!)も既に割り振られていますので、お楽しみに。これからもよろしくお願いいたします。
Commented by minaminouozafk at 2016-09-22 20:02
読書量、そしてその深さには(はやさにも!)いつも驚かされています。「COCOON」のご紹介、ありがとうございます。「羽化のやすからぬ」ことの歌、ありがとうございます。C.
Commented by 大松達知 at 2016-09-22 21:34 x
さっそくにありがとうございます!
Commented by minaminouozafk at 2016-09-23 06:58
COCOON、勢いを感じます。頑張って下さい。S.
by minaminouozafk | 2016-09-22 10:49 | 歌誌・歌集紹介 | Comments(5)