2016年 09月 09日
愛子さん
やがて、白秋祭の季節が来る。
11月2日の白秋祭短歌大会の選者に、昨年より宮英子氏に代わり小島ゆかり氏が加わり、今年はゆかりさんが講師として来福される。
講演会で、どんな白秋像を語って下さるのかとても楽しみ。
でも、今年から白秋祭は、私にとって少し胸がきゅんとなるものとなってしまった。
今年4月30日お亡くなりになった、柳川支部の西山愛子さんとの約束である。
愛子さんは、面倒見が良く、短歌への取り組みも熱心な方で、皆から「愛子さん」と親しまれ、愛される方だった。
娘くらいの年齢の私に大会でも気さくに声を掛けて下さり、福岡支部歌会にも参加され、折々に励まされていた。
白秋祭は、柳川支部の皆さんが縁の下の力持ちとして支えておられるのだが、愛子さんもそのひとり。高野さんが来られるときは、終了後の囲む会の時に地元の珍味である、むつごろうやわけのしんのすを調理し持参され、おもてなしして下さった。
一昨年冬、胆管癌が見つかり闘病生活に入られ、度々胆管のチューブを交換しなければならないなど、辛い治療に耐えながら、第一歌集を上梓された。
昨年冬の東京歌集批評会には、お嬢さんが代理で出席されたが、盛会だったことを聞き、出席していた私に帰宅して数日後、お電話を下さった。
チューブ交換後であり、批評会の話を聞いて体調も良いときだったようで、明るいお声だった。
今年の白秋祭に、ゆかりさんが来られることを伝えると、かわいらしい柳川弁で
「そうね~ゆかりさんが来なはると~。それまでに元気にならやんねぇ。ゆかりさんにも、ご馳走ば用意せやんね。英子さんも一緒に手伝どうてね。」と話され、一緒に準備する事を約束したのに。
この電話を頂いたのは仕事を終えアクロスビルを出るときだった。
健気で明るい愛子さんの声に、吹き抜けの天井を仰いだ。
いつもは造形美を感じていた景観が、傷だらけの半月のように見えて少し哀しかった。
愛子さんの歌集『トンボの気分』より
嫁とわれ本音言合ひそののちは雨後の木立のやうにさはさは
再びは来ずと思へば五家荘久蓮子(くれこ)吊り橋の揺れを恐れず
夏の夜の星と遊びてそだちけむ今朝のゴーヤはずつしり太る
フリージアの球根ひとつ小春日に土をおこして寝かしつけたり
紫陽花の色は天意の賜物と眺むる愛子八十八歳
常に好奇心にあふれて前向き、全てに愛を注いでこられた愛子さんのお人柄そのままの優しさに満ちた歌集です。
葬り日は八十八夜晴れわたる空に満ちゐし愛子さんのこゑ 大野英子
そして、ブログは、その思い出を発信できる場としてありがたいです。早苗さん、思いついてくれてありがとー。
愛子さんも、きっと喜んでくれているよね。今夜は、美しい半月です。E.